【音楽レヴュー】James Blackshaw/Unraveling In Your Hands

音楽レヴュー

2024年11月13日リリース

James Blackshawの新作「Unraveling In Your Hands」やっと聴けました。

彼はタコマレコードのサウンドに影響を受けたギタリスト、ピアニスト、作曲家です。
アメリカンプリミティブギターのスタイルから出発しました。
ごく初期段階ではタコマの12弦アコースティックギターのギタリストRobbie Bashoの影響を強く感じるスタイルです。

2006年作「O True Believers」、2007年作「The Cloud Of Unknowing」では、創造的な飛躍がありました。
ミニマルミュージック、ドローン音楽の影響感じさせ、響きに特化した独特な新しい音楽を発明しました。
その後の作品ではより、ソロギタリストの範疇に収まらない、ミニマルミュージックやより構築された音楽を発表していました。
(個人的にはウクライナ人ピアニストLubomyr Melnykとのデュオ作「The Watchers」がお気に入り)。

彼は2016年に活動休止を発表し、今作「Unraveling In Your Hands」はおよそ10年ぶりの新作です。
CD、レコード、サブスクだけでの収益だけで生活するのは難しく、多くのツアーと新作の発表が必要だったようです。そのことに疲弊し、燃え尽き症候群のようになってしまった。
彼のブログにこのあたりの事も赤裸々に書いています。

2012年頃、彼の日本公演に行きました。
素晴らしい演奏でした。
ライブの最後に即興演奏をおこない、演奏後「即興演奏は簡単だからやらない」
というようなことを言っていたのが印象的でした。
お客さんは多いとは言えず、James Blackshawほどの音楽家でも日本で集客できないのかと
残念に思った記憶もあります。

活動休止後はより経済的な安定を求めて、飲食業界へ転身したようです。
バーとキッチンの仕事を転々とし、切望していた安定は得られませんでした。
日本人の奥様とラーメン屋(Sumisu Ramen)の運営もしており、好評のようです。

2019年に活動再開を発表しました。
その後、神経衰弱、愛犬の死、黒氷(アイスバーン)での転倒(右肩骨折怪我)、盟友John Hannonの死、様々な困難があり新作発表に時間がかかったようです。

John Hannonは2023年亡くなりました。
今作のクレジットにはJohn Hannonに捧ぐというクレジットがあります。

彼はJames Blackshawのほとんどの作品のレコーディングに関わっている人物です。
NO Recording Studioのオーナー、エンジニア。バイオリン奏者。Liberezのメンバー。
NO Recording Studioはアナログ機材の導入、自然の響きを活かす録音、
「場の記憶を刻む」音源を作っていました。
「The Cloud Of Unknowing」はまさに「場の記憶を刻む」音楽です。
調べてみるとTom James Scottのアルバムもこのスタジオでの録音でした。
Tom James Scottの「Red Deer」「School & Rivers」は演奏、録音ともに僕のお気に入りです。

今作は2023年にバンドキャンプ上で事前予約が開始され、
その資金もレコーディング費用にあてられたようです。
2024年デジタルでのリリース、2025年にアナログでのリリースが達成されました。
新作を心待ちにしていたファンの支援があってこそのリリースでした。

表題曲「Unraveling In Your Hands」
以前からのプリミティブギターのスタイルの楽曲の延長線といえますが、
以前の圧倒的な音響、荘厳さというより個人的でエモーショナル演奏です。
いくつか主題が移ろい繰り返されます。
マイナーのブルースから、より音は解きほぐされていきます。
26分、1発録音の会心作。

「Dexter」
愛犬Dexterに捧げらてた曲。
マルチインストゥルメンタル奏者Charlotte Glassonがストリグンス、金管楽器で参加。
線のメロディーが折り重なっていく、ポリフォニーな作品です。
開放感のあるアンビエントな作風です。

「Why Keep Still」
何故じっとしているの?という意味でしょうか。
ひっそり始まったアコースティックギターの演奏にピアノが重ねられていきます。
親密な演奏です。彼の今後の活躍を予感させてくれます。

Unraveling In Your Hands by James Blackshaw


James Blackshawが帰ってきてくれて大変嬉しいところです。
2026年の1月には新しい作品のプレリリースが始まっています。
今後も彼の活動を追いかけてみたいと思っています。

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